研究課題/領域番号 |
08558005
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研究機関 | 三重大学 |
研究代表者 |
征矢 英昭 三重大学, 教育学部, 助教授 (50221346)
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研究分担者 |
浜中 健二 三重大学, 医学部・附属病院, 助手 (70242956)
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キーワード | 筋収縮 / c-fos発現 / ラット / 免疫組織化学 / 脳 / 視床下部 / アルギニン・バソプレッシン(AVP) / 脳幹 |
研究概要 |
本研究は神経科学研究分野で頻繁に用いられているc-fos原癌遺伝子または、あるいはその蛋白発現をin situ hybridization法あるいは、免疫組織化学的手法により実験動物(ラット)の脳切片上で視覚的に同定する方法を利用し、走運動に関与する中枢神経部位を同定することを目的としている。昨年(平成8年度)は、ラットの走運動モデルを用い、主に乳酸性作業閾値(LT)に相当する走速度で検討した。本年は、さらに、麻酔下の動物に動時と同様に脳神経のどの部位を興奮させるかについてやはり同様なc-fos発現を用いて検討した。 麻酔下の雄ラットを用い、座骨神経を刺激し、筋収縮を惹起させた際の、中枢におけるc-fos発現部位について検討した。今回は、免疫組織化学的にc-fos蛋白を同定する方法を用いた。 電気刺激前・後の時間(刺激後およそ2時間)で動物をと殺し、4%paraform-aldehydeで脳を還流固定後、脳を摘出し、冷凍保存した。凍結した脳はミクロトームで40μmの前額断切片を作製した。切片はfree-floating法によりc-fos抗体をABC法(アビチン-ビオチン法)により染色した。尚、c-fos発現のみられている部位について、視床下部では、アルギニン・バソプレッシシ(AVP)ニューロンである可能性が高いので、AVPの免疫組織化学をc-fosとの二重染色を行うことにより検討した。 結果は、麻酔したラットで筋収縮を起こさせた後でも、視床下部室傍核の神経群のc-fos遺伝子発現が増加することが判明した。その他、視床や大脳基底核など、運動の企画などに関係する部位も染色された。認知に関する海馬などの辺縁系や運動の実行指令に関わる大脳皮質については、c-fosの発現はほどんと認められなかった。視床下部のAVPニューロンとの共存を詞べてみると、室傍核のAVPニューロンにおいてc-fos蛋白の発現が認められたことから、筋収縮に伴い視床下部室傍核のAVPニューロンが興奮することが示唆された。視床下部に投射する脳幹について検討したところ、孤束核や青斑核、あるいは、網様体などにc-fosの発現がみられた。ノルアドレナリン系神経の興奮とそれによる視床下部の興奮が筋収縮に伴い生じる可能性が示唆された。なお、これらの対象詳として、刺激一筋収縮を惹起しないラットでは、c-fosの発現はほとんど認められなかった。脳の上位(辺縁系や皮質)にc-fos発現が見られなかった理としては、今回用いた麻酔(Pentobarbital)の影響が考えられる。今後は、それらの脳部位への影響が比較的マイルドとされるKetamineなどを用いて、再度検討する必要がある。
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