走査型トンネル顕微鏡(STM)は、大気中で原子一個一個の像を見ることができるという驚異的な性能をもった顕微鏡である。このような特徴からするとSTMは、学生・生徒が原子概念を学習する際の原子実在の直接的な証拠の例示にまたとない教育用機器として使用できるものと考えられるが、STM装置は最近その市販が始ったばかりで、現在ではまだ研究用機器の域を出ず、その値段も高い。本研究では、教室でも使用できるような、原子概念理解のための簡易な携帯型STM装置を試作することを目的とした。研究成果の概要は以下のとおり。 1. STM装置で最も費用のかかる制御・観測部を、近年教育現場に導入の進んでいるパーソナルコンピューターで置き換えることによりコストの削減を試みた。STM制御用アルゴリズムを用いたディジタル制御回路を開発し、現有の研究用STMヘッド部との適合性を検討した。 2. 持ち運びが容易でかつ堅牢な簡易型のSTMへッドを試作し、上記ディジタル制御回路との適合性を検討した。 3. 以上より、容易に安定なグラファイトの原子像を得ることのできる携帯型STM装置を試作することができた。
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