研究課題/領域番号 |
08558019
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研究機関 | 茨城大学 |
研究代表者 |
尾崎 久記 茨城大学, 教育学部, 教授 (40092514)
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研究分担者 |
篠田 晴男 茨城大学, 教育学部, 助教授 (90235549)
北島 善男 千葉大学, 教育学部, 助教授 (70260479)
小池 敏英 東京学芸大学, 教育学部, 助教授 (60251568)
毛塚 恵美子 群馬県立女子大学, 文学部, 助教授 (40145644)
天野 幸子 女子栄養大学, 教授 (60076172)
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キーワード | 多角的認知活動計測解析システム / 視覚認知 / 視覚定位 / 新生児 / 幼児 / 知的障害 / 重症心身障害 / マルチカメラ記録システム |
研究概要 |
本プロジェクトでの研究成果は、認知機能に関する下記1)〜8)に分けられる。各項目の研究実績概要は以下の通り。 1) 乳児における視覚定位過程:生後、視覚系がどのように確立してゆくのかは、人間の認知機能を考える上でも興味深いが、言語的コミュニケーションが困難な新生児や乳児がどのように外界を見ているのかは、彼らの行動情報が拠り所になる。今回は4分割同時記録画情報で多角的に乳児の視覚行動をを解析することが有効であることを見出した。 2) 幼児における手指運動過程:幼児期には動作が急速に確立してゆき、特に手指運動機能の発達は著じい。今回、幼児期の描画行動や遊びを調査するとともに、幾何学パターン触察過程をマルチカメラでの多角的映像で検討し、3歳児に比べ4歳児は触察もより効率的な方略を体得しており、視覚的イメージ情報との照合も的確であることを見出した。 3) 知的障害児における認知過程:眼球運動計測により視線位置を知ることができるが、そのためにはセンサー等を付け姿勢を拘束する必要があるため幼児や知的障害児での計測は困難であった。そこで計測方式を非接触型にして多数の観測角度から多角的同時映像を集録することにより、これまで困難であった子ども達の視覚認知過程を検討できるようになった。さらに、数字刺激処理中の脳内情報処理や有効視野についても検討した。 4) 発語と言語知覚:語音の認知は言語コミュニケーションの基礎である。ダウン症児の発語状況を調べるとともに、子音と母音からなる単音節の母音部切断音の聴取状況と事象関連電位を調べ、語音のカテゴリー的知覚を検討した。 5) 視覚障害者における認知:視覚障害者は視覚以外の感覚情報への依存割合が高い。指先振動刺激での脳内反応も視覚障害者ではより明瞭に出現していたが、両耳で音響特性が異なる聴覚刺激の認知は晴眼者とほぼ類似していた。 6) 重度障害児・者における認知:重症心身障害は感覚や表出機能が制約されており、外界情報取り込みやその認識が可能か否かの評価が難しい。重症心身障害児者の応答を「快・不快」の行動反応や心拍による期待反応から検討した。 7) 脳波・事象関連電位での検討:行動反応にともなう脳内情報処理と関連して、有効視野の違いによる脳波トポグラフィーや背景脳波によって評価される脳のマイクロステイツについても言及した。 8) 運動負荷による検討:運動に伴う身体的変化をマルチカメラ行動観察システムにより検討した。有酸素運動時の心拍、呼吸,、体表面温度、歩幅、歩数を計測し,ダイナミックな運動負荷が身体にいかなる影響を及ぼすのか検討した。 以上の個別課題の検討の結果、本プロジェクトで開発したシステムが個体差が著しく実験条件のコントロールが困難な乳幼児や障害児の行動解析に幅広く活用できる目処がついた。
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