研究概要 |
多波長光電子集積システムを実現するためには,面発光レーザや光導波路の他に,指定された波長領域の信号を選択的に検出し,波長間演算を実行する「適応波長セレクタ」が不可欠である.そこで,誘電体多層膜フィルタとフォトダイオードアレイからなる「波長検出部」,ならびにその信号を受け,波長信号を分離・演算する「適応演算部」から構成される適応波長セレクタの基本設計を行った. 1.誘電体多層膜中の光波干渉を数値計算することにより,波長域600〜900nm程度のさまざまな光学フィルタの特性を設計した.具体的に設計した光学フィルタは,(1)波長365nm, 690nm, 750nm, 830nmの光を分離するための4つのフィルタの組,および(2) 630nm〜850nmの波長域の複数の光を分離するための単一の傾斜堆積型光学フィルタである. 2. pn接合フォトダイオードアレイを試作し,その上に誘電体多層膜を堆積することにより上記(1)のタイプのフィルタを用いた波長検出部を実現した.誘電体多層膜は約300°C程度の低温で堆積することが可能であり,標準的なCMOSプロセスに組み込むことが可能であることが判明した.(2)のタイプのフィルタに関しても,ガラス基板上に堆積する予備実験を行った. 3.上記(1)のタイプのフィルタを用いた波長検出部に対する適応演算部をワークステーション上で設計した.誘電体多層膜フィルタの逆特性をシミュレートする機構を実現することにより,波長635nm, 690nm, 750nm,830nmの4種類の波長を分離できることを明らかにした.
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