研究概要 |
多波長光電子集積システムを実現するためには,面発光レーザや光導波路の他に,指定された波長領域の信号を選択的に検出し,波長間演算を実行する「適応波長長セレクタ」が不可欠である.そこで,誘電体多層膜フィルタとフォトダイオードアレイからなる「波長検出部」,ならびにその信号を受け,波長信号を分離・演算する「適応演算部」から構成される適応波長セレクタについて,実験的検討を行った. 1.昨年度に試作したタイプ(1)の光学フィルタを使用した4波長検出部の実験結果を踏まえて、垂直堆積型の光学フィルタを使用した場合の識別可能な波長数の限界について定量的評価を行った.例えば、波長変動として,発光素子側と光学フィルタ側で,それぞれ±3nmの波長変動が存在する場合,発光素子の発振波長範囲を100nm,フィルタ膜厚が5μmと仮定すると4波長識別が限界であり,これがもし波長変動を±2nm,フィルタ膜厚を7μmまで許容できれば,8波長識別が可能になることが判明した.しかしながら,試作実験の結果より,7μmの厚さのフィルタのパタ-ニングを8回繰り返すことは,技術的にもかなり困難であり,波長数増加のためには傾斜堆積型フィルタなどによるブレークスルーが必要であることが判明した. 2.昨年度に予備実験を完了したタイプ(2)の光学フィルタ(630nm〜850nmの波長域の複数の光を分離するための単一の傾斜堆積型光学フィルタ)を使用した波長検出部の試作実験を行った.まず,44個のpn接合フォトダイオードアレイ(14mm×4mm)を試作し,その上に中心膜厚4.9μm層数45のTa_2O_5/SiO_2による誘電体多層膜を堆積し,パタ-ニングおよび素子配線を形成することに成功した.ただし,本工程の条件の導出に予想外の時間を要したため,現在,詳細な解析を実施中である.
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