研究概要 |
多波長光電子集積システムを実現するためには,「適応波長セレクタ」が不可欠である.昨年度までに,その波長検出部の試作を完了している.本年度は試作結果に基づいて,適応波長セレクタ全体の性能評価を行うとともに,その光インクコネクション/光コンピューティングへの応用について検討した. 1. 昨年度に試作したタイプ(2)の光学フィルタ(630nm〜850nmの波長域の複数の光を分離するための単一の傾斜堆積型誘電体多層膜フィルタ)を用いた波長検出部の特性を評価するとともに,その信号を受けて波長信号を分離・演算する適応演算部をワークステーション上で設計した.その際に,各波長の光パワーの推定のために擬似逆行列演算を用いることにより,8〜16波長程度を適応波長セレクタ上で分離・検出することが可能であることが明らかになった. 2. 適応波長セレクタを用いた多波長光インタコネクションネットワークとして,導波路を使用する多波長光ハイパーキューブならびに自由空間光接続に基づく光ウェーブキャスティングアーキテクチャを提案し,8〜16波長の使用により,前者においては配線の面積的複雑さを1/64〜1/256に減少でき,後者においては.通信バンド幅を8〜16倍に向上できることを明らかにした.さらに,その他の応用として,光集合論理演算システムおよび光ニューラルネットワークの構成を検討するとともに,理論的体系化とモデル実験を行い,その原理を確認した.この過程を通して,本研究で提案してきた信号の多重化による新しいコンピューティングの原理が,正弦波や直交ディジタル系列などで変調された電気信号を情報担体として用いることにより,現行のVLSIアーキテクチャへ応用可能であることが判明し,基礎的検討を行うとともに,今後の研究課題を明らかにした.
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