研究概要 |
本研究の目的は,被災者のこころの傷のケアをPTSDの精神科的な治療として捉える阪神淡路大震災で提示された狭義な見方を排し,PTSDの予防を目的として被災者の自助努力に対する地域社会の支援を考える防災的なケア・プログラムの開発である.本年度は以下の点が明らかにできた. 1)ヴェトナム戦争以来,PTSDの治療の予防のための数多く開発されてきたアメリカのケアプログラムをNOVA,IATC,CISDの3モデルに関して比較検討して,デブリーフィング,デフュージョン,ディモ-ビライゼーションの3手法が災害発生直後のケア手法として有効であることが明らかになった. 2)阪神淡路大震災後の長期的な実態調査から,アメリカ型のモデルにはない,わか国独自のケア手法の存在が明らかにできた.たとえば,(1)日常的な生活の問題点を一緒に解決することを通してラボールの形成をはかる.(2)りんごを剥く,血圧を測るといった個人的なサービスの提供を介してらポールの形成をはかる,(3)地域の保育施設の担当者が常時子どもと母親の様子を観察し,定期的の訪問する臨床心理士と連携し,生活相談を通してケアをはかる,(4)ひまわりの種の無料配布とその後の礼状の交換を介した手紙による高齢者の自立支援する.といった試みが有効であったことが明らかにできた. (3)阪神淡路大震災の被災地域を対象としたこころのケア活動に関する意識調査の結果からは,精神的な支えになりつらさを打ち明けた相手は,震災前からの人間関係のなかから選択されており,一部で報道されたほどにはボランティアや精神医療関係の専門家の役割は小さかった.この結果は,地元で継続的に話し相手となれるローカルゲートキ-パ-の役割の大きさを実証した. 4)以上の知見をまとめて,ローカルゲートキ-パ-向けの3日用のワークショップ用のプリゼンテーション用資料を完成させた.
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