研究概要 |
平成9年11月にカナダモントリオール市で開催された国際トラウマストレス学会において,「阪神淡路大震災時のケア活動」と題して3時間のシンポジウムを主催し,林,西尾,立木,羽下,及び研究協力者兵庫県立精神保健健康センターの麻生の5名で報告し,会場の参加者との討議を行った.西尾は災害ストレスの発生に関する生理心理学モデルを構築し,行動面,感情面,生理面でのストレスによる変調を統一的に把握するためのモデルを報告した.麻生は精神科医の視点から阪神大震災における兵庫県を中心とした活動の実態を紹介し,多くのPTSDの存在を報告した.立木は社会福祉の立場から,心のケア活動におけるラポートの形式の重要さを指摘し,その確立法について幾つかの実例を報告した.羽下は臨床心理学の立場からボランティアのバーンナウトのメカニズムについて報告した.林は社会心理学の立場から,被災者の支えになったものが震災前からの人間関係の豊かさによって規定されており,震災後に登場した心のケアの専門家による直接的な影響力は小さいことを報告し,心のケアは被災者直接よりも地元のローカルゲートキ-パ-への啓発を主体とし,その活動を後方から支援する心のケアの2段フローモデルを提案した.井口は本年度も一宮町での幼児とその母親を対象とした心のケア活動の継続を通して,長期的な回復過程を実証的に検証し,やはりローカルゲートキ-パ-を活用することの有効性を見いだしている.以上のように,阪神淡路大震災における心のケア活動とその有効性について検討するとともに,ケアプログラムの内容については,災害ストレスによる心のケアプログラムについてもっとも経験を有する米国赤十字社のボ-エンキャンプ女史と共同で内容の整理を行った.
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