研究概要 |
二酸化炭素の精密測定装置の試作と溶存状態解析システムの構築を中心に研究を行った。 1.海水中に溶存している二酸化炭素(CO_2)の精密測定装置の製作 フローインジェクション方式(FIA)による総炭酸の精密測定装置の構築のために,次の(a)〜(d)に関する基礎研究を行い,目的とする装置を構築した。さらに装置のポ-タブル化にも成功した。 (a)高効率ガス拡散透過装置の開発:気体状二酸化炭素を透過し易い膜としてPTFE製のチューブ型膜を見い出した。この膜を組み込んだガス透過装置を製作し,海水中の全CO_2の測定が可能となった。(b)二酸化炭素検出反応の開発:各種酸性染料を合成し,基礎検討を行った。その結果,感度と精度に優れた検出試薬として,クレゾールレッド及びスルホン基を持つアゾ試薬を見い出した。(c)イオン交換法に基づく二酸化炭素を含まない基準水の製造装置の開発:弱塩基性の陰イオン交換樹脂カラムに,イオン交換/沸騰蒸留/ミリQ処理した純水をポンプで流すことにより,基準水を得る装置を開発した。(d)FIA方式二酸化炭素測定法の開発:二流路方式FIAに新開発のガス拡散透過装置を組み込み,キャリヤ-流れに酸性溶液,試薬流れにアルカリ性検出試薬溶液を用いることにより,微量のCO_2を正確・迅速に,精度良く測定できる装置を開発した。持ち運びできる可動式CO_2装置開発も検討し,LEDをプローブ光に用いるオンサイト測定を可能とするバッテリ-駆動方式ポ-タブル装置を開発した。 2.海水中の二酸化炭素の溶存状態の解明 塩化ナトリウム濃度,温度(0〜35°C)を変化させた条件下で,正確な炭酸の酸解離定数の決定について検討した。更にCO_3^2,HCO_3と海水中に多量に存在する金属イオン(Mg^<2+>,Ca^<2+>,Sr^<2+>,Al^<3+>)との錯体生成反応の信頼できる平衡定数決定について検討した。これらの正確な平衡定数を用いて,海水中の二酸化炭素の溶存状態を,pH,NaCl濃度,温度,金属イオン濃度の関数として表示できるシステムを構築した。
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