研究概要 |
脱窒菌を陰極となる電極に付着固定した固定化微生物電極を用い太陽電池を利用してon-siteで簡便に硝酸イオン汚染水の脱窒を行う新しい処理プロセスの開発を目的として,本年度は,回転円盤電極型処理装置を作製し,その流動・混合特性を検討するとともに直流安定化電源を用いて脱窒処理実験を行い,脱窒速度に対する操作条件の影響を検討した.また,本法に用いる電極材料の選定に関する検討も併せて行い,以下の知見を得た. 1.本法は,陰極からの電解生成水素と脱窒菌の無酸素環境化における異化代謝を利用するため,脱窒菌活性を高く維持するために陽極における酸素生成に留意する必要があるが,炭素質材料を陽極として用いると炭素の電気化学的酸化に伴う二酸化炭素生成により酸素の生成が抑えられ,本法に有効であることが示唆された. 2.回転円盤型電極を陰極とし,陽極となる電極を装置側壁に固定した反応装置を製作し,トレーサのインパルス応答法により,流動・混合特性について円盤電極の回転方向,回転速度,電極数および滞留時間の影響を検討した.回転速度を3rpmから12rpmまで増大すると混合は,約2.5倍増大した.また,短い滞留時間ほど混合がよく滞留時間を長くとると混合度は低下した.実験範囲では,回転方向および電極数の影響は極めて小さかった.装置側壁に設置された電極板が存在することで固定電極がない場合に比べて液混合は低下した. 3.本法では,電流値が増大するに従い,脱窒速度は増大した.また,通電と共に水素供与体となる有機物を少量添加すると脱窒反応は促進された.このとき,添加有機物と電解生成水素は,ともに電子供与体として陰極の脱窒菌生物膜内で利用されていると考えられた.滞留時間11h,300mAの通電でほぼ100%脱窒が達成された.電圧は,2.2〜3.0V程度で安定しており,太陽電池を用いて充分に処理を行う可能性が示唆された.
|