研究概要 |
研究概要を以下に示す. 1.抗P388細胞毒性物質 伊豆の未同定海綿より新規含ハロゲンピリジン誘導体を得た.強い抗P388活性を示すユニークな構造を持つ.同様に沖縄運天周辺で採集した海綿動物由来から一連のセスタテルペン体を単離したが,活性の本体については今後の課題である 2.アポトーシス誘導物質の探索 癌細胞にアポトーシスを引き起こす物質の探索を進めることとした.抗癌剤はほとんどすべての癌細胞にアポトーシスを誘導することが解ってきたこともあり,実験を開始することとした.様々な刺激で共通経路を経てアポトーシスが誘導されるが,細胞内での共通のメディエータの同定は現在極めてホットな話題の一つである.そのようなこともあり,1)固形癌細胞にアポトーシスを引き起こす海洋天然分子の探索,2)制癌剤例えばエトポシドで細胞内に誘導されるメディエータの分離,精製,について研究を進めている.後者についてはHL-60細胞をVP-16で刺激し,細胞質内に存在する低分子メデォエータの単離,構造決定を目指している.現在このアッセイ系で見つかった分子としてジョルキノリドDがある.この物質は植物イワタイゲキ中に含まれるジテルペンである.立体化学が決定されていなかったこともありX線結晶構造解析を実施し,幸いなことに極めて小さな結晶であったが解決した. 3.VCAM-1(Vascular Cell Adhesion Molecule-1)の産生阻害物質 血管内皮細胞接着分子はリンパ球や悪性腫瘍と血管内皮との接着を司る分子である.この分子の内皮細胞上での産生を阻止できれば炎症病巣の発生や,癌の転移を抑えることが可能であろうと考えアッセイ系を組み探索を進めてきた.今年度はこの方法で発見したハリクロリンのin vivoでの癌転移抑制実験を実施中である.尚,海綿動物,および放線菌の仲間からの活性物質2種について分離精製中である.
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