研究概要 |
本年度の研究成果を以下に示す. 骨粗鬆症モデルマススに効果のある,ノルゾアンタミンが発見され,化学反応や構造活性相関について研究した.多くの研究者の興味を集め,社会的反響も大きかった.VCAM-1産生阻害物質,ハリクロリンの絶対配置が決定でき,抗炎症性やがん転移抑制が検討されつつある.アポトーシス誘導物質としてジョルキノリドDが見つかり,構造活性相関についての研究を進めた.しかしながら,生体内実験で,抗腫瘍性は観察できなかった.ガーリックのファイトアレキシン,アリキシンの全合成を達成した.発がん抑制作用があり,生体内実験に向けての試料供給が可能となった.トリブロモアセトアミド誘導体にチューブリン重合抑制活性があり,制癌剤としての期待が持たれる.本物質は合成によって大量供給が可能で,今後の展開が期待できる.強力な細胞毒性物質,アマミスタチンA,Bの単離と構造決定が達成された.シドロフォア構造を持つと推定され,生体内実験に期待がかかる.抗HIV活性を示すインゲノール誘導体を開発した.十分な量の試料供給が可能である. 水圏抗菌性物質とは従来展開してきた海洋付着生物の防除を目指したバイオフィルム形成制御に関係する物質であり探索と応用開発を継続させた.フジツボ,イガイ,藻類など海洋付着生物による汚損は海水と接するあらゆる固体表面で発生する,極めて厄介な問題である.経済的な問題もさることながら,従来使用してきた重金属の付着防除物質は環境保全の点から使用禁止になりつつある.特に環境ホルモンの中心の一つとしても話題になっている.現在,シリコンなど高分子処理に期待がよせられてはいるが,問題点も多く,相変らず活性な有機分子の必要性が高い.このような状況から主として海洋生物自身に学んだ汚損防止剤の開発研究を実施してきた.フェネチルアミン誘導体が極めて有望な物質として現在も海洋実験を継続させている.
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