研究概要 |
本研究の目的は、緩やかに変性剤を除く方法(透析法)を広く変性蛋白質の効率的再生反応に応用することである。単量体蛋白質として、リボヌクレアーゼAとタカアミラーゼAについて検討した。リボヌクレアーゼA(分子量14,000)は従来の希釈法(変性剤をすばやく希釈する方法)でも比較的効率的に再生するが、この方法を用いることにより、より効率的に(10mg/mLの濃度でほぼ定量的)に再生することができた。また、Aspergius orizae由来のタカアミラーゼAは、希釈法を用いた効率的な再生は困難であると報告されている。しかし、純度の高いタカアミラーゼAは現在市販されていないので、Sigma社から市販されている粗精製物から目的とする蛋白質を精製した。この蛋白質を変性状態から、希釈法と透析法を再生したところいずれの方法でも効率よく再生した。一方、多量体蛋白質では、クエン酸シンターゼとエノラーゼについて行った。クエン酸シンターゼ(分子量100,000)は、再生条件から透析法を用いて再生したところ、まったく活性体は得られなかった。また、エノラーゼ(分子量80,000)は、15μg/mLの蛋白質濃度で希釈法により効率よく再生する(70%)ことが報告されているが、やや濃い蛋白質濃度(100μg/mL)では再生率は低下した(〜50%)。この蛋白質濃度では、透析法を用いると(70%以上)再生した。透析法が効率的な再生に有効であることが示された。以上述べたように、いくつかの蛋白質で透析法の有効性が実証された。しかし、透析法を用いても再生しない蛋白質もあるので、今後はこれらを再生すべく新たな再生方法開発を行う必要がある一方、不安定な蛋白質の効率的に再生方法として、グリセロールや硫安が有効であることを証明した。
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