タンパク質分子のナノメートルレベルの微小運動を1分子ごとにマイクロ秒の時間分解能で測定する"超高速・超高感度微小変位計測装置"を開発し、細胞膜タンパク質の微小変位測定に応用することが本研究の目的である。この目的を達成するため、本年度は以下のような実験を行った。 4分割型のアバランシェフォトダイオードを光検出器とする、微小変位測定装置を開発した。エクスターナルキャビティーダイオードレーザー(発振波長810nm)を光源とする反射偏光顕微鏡を作成した。光検出器と顕微鏡のインターフェースを行った。さらに、光検出器のS/Nが最大になるように冷却温度と引加電圧の最適化を行った。 ゲル中に固定した直径10-100nmの金コロイド粒子を標準試料として、装置の基本性能を測定した。静止した試料で0.5-2V/chの信号強度と、100以上のS/Nが得られた。この信号強度において、0から17MHzの周波数帯域(-3dB)で測定が可能であることが確かめられた。この値は、初めに期待した周波数帯域0-1Mhzを上回るものである。 標準試料をピエゾステージを用いて周期的に動かし、装置の位置検出精度を測定した。顕微鏡の総合倍率を375倍として、試料上で直径200nmの範囲で位置測定を行うことが可能であり、位置検出精度は3nmであった。実験室の電源電圧の揺らぎが現在の位置精度を規定しており、装置自体は1nmよりも良い精度を持っているものと考えられる。 以上のように、測定装置は期待通りかそれ以上の性能で完成したので、今後は実際の細胞膜蛋白質の微小変位測定への応用研究を行う。
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