大腸菌では約4000の遺伝子でできており、ヒトの場合は数万ないし10万の遺伝子でできている。それぞれの遺伝子はタンパク質をコードしており、それぞれのタンパク質は機能を持った分子機械となっている。そして、各タンパク質は固有の構造を持っており、それによって多様な機能を発揮している。そこで研究では全体の約1/4に相当する膜タンパク質を対象として膜タンパク質の判別と構造を予測する方法を開発した。 膜タンパク質の判別の問題では、3つのパラメータ(ヘリックス領域の平均疎水性値、平均両親媒性値、タンパク質全体の大きさ)を用いると、高精度の判別が可能だということが示された。約500個の構造の分かったタンパク質を用いて判別制度を調べた結果、膜タンパク質の判別では99%、膜貫通ヘリックスの判別では96%の精度が得られた。 7本の膜貫通ヘリックスを持つ膜タンパク質における膜貫通ヘリックス配置問題においては、極性の側面ができるだけ向き合うように配置することによってユニークな配置をするという極性ジグソーパズルの考え方を基本とした。任意の構造を生成できるようにするために、三角格子モデルをテンプレートとした。これによって、膜貫通ヘリックスの配置、方向、傾きなどがエネルギー最小構造として決定できる。実験的に構造が分かっているバクテリオロドプシンに対してこの方法を適用したところ、非常に良く似た構造が予測された。 本研究では、膜タンパク質における様々な構造の特徴にはそれぞれを特徴づける相互作用があって、それを適切に取り込めば構造予測が可能であるということを示している。
|