研究概要 |
高感度三次元(3D)データ収集ポジトロンカメラ(PET)と磁気断層画像法(MRI)を用いる脳賦活検査法の確立を目指して以下のような研究を行った。まず、膨大な計算時間を伴う三次元画像再構成法をルーチン利用できるようアルゴリズムの高速化を図り、1断面あたり1秒という世界最高速の画像再構成に成功した(Ann Nucl MED,1997)。これにより、放射性注射水を投与後の脳内放射能の時間変化をダイナミックに追跡でき、同時期に開発した無採血脳血流計算法(J Cereb Blood Flow Metabol,1996)を応用することで脳血流量が3D-PETにより定量できることになった。更に、この条件下での被験者への放射線被曝を評価し(J Nucl Med,1997)、通常の2D画像採取法に比較して1/10の放射線被曝線量であることが確認できたので、3D検査法を患者のみでなく、女性を含む健康な被験者に於いて応用することが妥当であると判断した。そこで、視覚的学習に関する脳生理実験を行い、学習に伴い課題遂行に関与する連合野の関与が減少することを見いだした(NeuroReport,1997)。更に、ポジトロン断層画像と解剖情報としてのMRI画像との位置合わせをアフィン変換により補正するプログラム開発に成功した。これによりPETで検出される賦活部位をMRI画像に重ね合わせて位置が同定できるようになった。また、パブリック.ドメインにある統計的画像処理プログラム(SPM96)を日本人に用いる際の混入が予想される位置的誤差を日本人と英国人各20名に於いて解剖学的標準化精度を検討したところ、SPM96及び、その標準template脳画像を日本人に用いても有意な誤差が生じないことが明らかとなった。このような基礎的検討をもとにPET及びMRIを用いて脳賦活研究を施行した(J Neurol.Ne urosurg Psychiat,1997 ; J Intl Soc Life Info Sci,1997 ; Am J Neuroradiol,1997)。
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