蛍光色素を用いた細胞内情報伝達過程イメージングシステムの開発

1998 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 08558084
• 研究機関: 東京薬科大学
• 研究代表者: 工藤 佳久 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (20080179)
• 研究分担者: 内山 茂 浜松ホトニクス(株), システム事業部, 研究員 ; 東 秀好 三菱化学生命科学研究所, 主任研究員 ; 森田 光洋 東京薬科大学, 生命科学部, 助手 (50297602) ; 中村 健 東京薬科大学, 生命科学部, 助手 (50227906) ; 宮川 博義 東京薬科大学, 生命科学部, 助教授 (90166124)
• キーワード: CAMP依存性キナーゼ / 可視化 / 蛍光試薬 / CAMP / 冷却CCD / 偏光変調

研究概要

本研究は昨年に引き続き情報伝達系可視化試薬の創製と改良およびその画像解析法の確立を目指した。
i) cAMP依存性キナーゼ活性可視化検出試薬の創製とその評価
cAMP-依存性キナーゼ(PKA)によって特異的にリン酸化される部位を含む17個のアミノ酸からなる合成部分配列ペプチドのC-末端に蛍光色素、BODIPYを結合させた試薬、P32-Bを創製した。この試薬は分子中のThr(スレオニン)のリン酸化により蛍光強度が約50%増加することが判明し、これまでに我々が作った試薬の中では最も強力な試薬であることが判明した。この試薬は細胞外液に入れておくだけで細胞内に負荷することが出来た。培養神経細胞に応用し、極めて有効であることを確認した。
ii) cAMP検出試薬の創製とその改良
昨年までに作成したcAMPに対する特異的結合能をもつ合成部分ペプチドを使ったcAMP検出用電極をさらに改良し、1μM以下のcAMPを検出できる電極の作成に成功した。このペプチドを蛍光試薬で標識し、cAMP量の可視化解析を試みたが、まだ充分な蛍光変化を示す試薬を創製には至っていない。
iii) 微弱蛍光変化の高速計測系の確立と応用
冷却CCDシステムを用いて、微弱蛍光画像を10msec毎に取得し、変化分を解析するためのハードウエアとソフトウェアを確立した。この方法を開発した蛍光試薬の評価に用いた。
iv) 偏光変調微分干渉顕微鏡の試作
液晶型偏光フィルターを用いて、同一画面からの光情報を偏光変調し、位相が90度異なる画像について画像処理を行うことによって、微分干渉画像の画質を向上することが出来た。さらに、これを蛍光顕微鏡にも応用し、上述の蛍光試薬(P32-B)について蛍光偏光を指標として、分子の変化を可視化することを試み、この方法でも分子修飾検出は可能であるという確信を得た。

研究成果

• [文献書誌] Watanabe, S., Takagi, H., Inoue, M. ,Miyasho, T., Kirino, Y., Kudo, Y. and Miyakawa, H.: "Differential roles for two types of voltage gated Ca^<2+> channels in the dendrites of cerebellar Purkinje neurons" Brain Research. 791. 43-55 (1998)
• [文献書誌] Kojima, H., Nakatsubo, N., Kikuchi, K., Urano, Y., Higuchi, T., Tanaka, J, Kudo, Y. and Nagano, T.: "Direct evidence of NO production in rat hippocampus and cortex using a new fluorescent indicator: DAF-2DA" NeuroReport. 9. 3345-3348 (1998)
• [文献書誌] 工藤佳久、森田光洋、東 秀好: "細胞内酵素活性の可視化解析法" 病理と臨床. 16. 1323-1326 (1998)
• [文献書誌] 工藤佳久、東 秀好: "細胞内プロテインキナーゼ活性可視化試薬" 蛋白質・核酸・酵素. 43. 1922-1926 (1998)
• [文献書誌] Kudo, Y., Morita, M. and Higashi, H.: "“The Adrenal Chromaffin Cell"" Hokkaido University Press (Eds. Kanno, T., Nakazawa, Y.and Kumakura, K), 394 (1998)
• [文献書誌] 工藤佳久: "バイオイメージング" 共立出版(曽我部正博、臼倉治郎編集), 266 (1998)