研究概要 |
前年度までに試作した近赤外光を用いた生体組織代謝モニタ装置について,以下の検討を行った. ●皮膚の影響の除去:皮膚および皮膚血流による光吸収も測定誤差の要因となる可能性があることから,皮膚を含む3層モデルのモンテカルロシミュレーションを行い,皮膚および皮膚血流の影響を推定した.その結果,送光器から3mmの位置に新たな近接受光器を配置し,吸光度データに差動法を適用することにより,皮膚および皮膚血流の影響のみを除去できることが示された.その結果を基に,新たに3〜40mmの距離に8個の受光器を配置したマルチセンサ方式のプローブを試作し,有効性を確認した. ●近赤外組織酸素モニタの有用性確認:本研究で開発した装置ならびに皮下脂肪厚補正法の有効性を検証するため,日本オリンピック委員会の協力を得てノルディック複合選手(11名)の筋組織酸素供給能力を測定し,一般成人と比較した.その結果,一流選手では一般成人に比し,筋組織酸素濃度の回復速度が1.7倍速く,運動負荷時の酸素供給能力に優れていることが示され,本装置による組織代謝量の定量的評価の有用性が実証された. ●生体組織の光学特性の計測:酸素濃度変化の絶対量を知るためには平均光路長,特に筋組織中の平均光路長が必要となる.筋組織中の平均光路長は,脂肪厚に最も大きく依存するが,筋組織中の光吸収係数と光散乱係数にも依存する.ピコ秒パルスレーザとストリークカメラを用いた時間分解測定を前腕で実施し,脂肪層の影響を含まない筋組織のみの光学特性を決定した.
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