研究概要 |
本研究の目的は,循環中枢の神経制御機能を規範モデルとした人工心臓の学習・適応制御システムを構築することにより,構造やパラメータの多くが未知あるいは時間的に変動するという生体循環系の持つ特性を考慮した人工循環制御を行うこでである. 本年度では,まず,完全置換型人工心臓を装着した成山羊を用いた動物実験を行うことにより,人工心臓の駆動条件の変更や,薬剤による生体系の生理的条件の変化に対する循環系の応答を解析した.その結果,生体循環系の制御対象としての動的挙動が,多変数・時変システムとして扱う必要があることが明らかとなった.また,循環系の血行力学的・生理学的パラメータのうち制御に重要と思われるものをいくつか選定し,操作量である駆動条件の変更と制御量である血圧・血流量・代謝情報等の変化との間の関係を制御工学的に検討した.設備備品費で購入した人工心臓駆動装置,流量計はこのために使用した. 以上で得られた結果に基づき,循環系を多変数系のうちの最も簡単な場合である2入力-2出力系とみなしてモデル化した.また,このモデルを基礎とし,自然心臓切除後の循環中枢の果たす神経制御機能の制御工学的役割,および人工心臓制御系のアルゴリズムについて種々検討した.特に,a)個体差,血行力学的パラメータ,前負荷・後負荷の変動に対して適応的な制御動作を行う適応制御,b)駆動機構と生体系の動特性を考慮した駆動エネルギーの最小化をめざす最適制御を実現するためのアルゴリズムを開発した.これをパーソナルコンピュータに実装し,その動作を模擬循環系において確認した.
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