本研究の目的は、多孔性担体のポアの中に酵素を含むゲルを充填し、外部から導入された基質分子(分子刺激)によりアポ内のゲルを収縮(又は膨潤)させ、担体とゲルの間に微細間隙を形成させることにより、間隙を通る液体の透過が制御できる複合材料系を構築しようとする試みである。この様な材料系は、バイオケモメカニカルシステムの発展であり、生物化学的変化に応答して物質透過が制御できる『バイオケモメカニカルバイブ』と考えることができる。そこで、本年度は、以下の3課題について検討した。(1)バイオケモメカニカルバルブの調製:NIPAAm、AA、MBAAmを含むモノマー水溶液にGODを溶解し、その水溶液中に多孔質薄膜担体を浸漬して0℃で重合を行ない、担体の再孔内にGOD包括ゲルを形成させることが出来た。(2)作成条件の最適化:この方法を用いて、モノマー濃度、酵素量、多孔質薄膜担体の種類、サイズ及び細孔径を変えながら、10種類のバイオケモメカニカルバイブを作成し、種々の圧力下で2〜3日間透水実験を行ない、作成条件の最適条件を決定した。(3)多孔性バルクゲルの調製と膨潤・収縮応答の検討:ウレアーゼを含む多孔性ゲル(NIPAAm/AA/MBAAm系)を調製し、その応答速度が極めて速いことを明らかにし、上記のバイオケモメカニカルバイブの作動機構を議論した。
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