研究課題
本研究の目的は、生体の脊髄クモ膜下腔において、脊髄根糸に長期間留置可能な微小電極(人工シナプス)を開発することにある。さらに、この人工シナプスを装着する際に不可欠な脊髄根糸の神経支配領域の同定方法も併せて開発することを目的としている。本年度は、微細電極による人工シナプスのプロトタイプ開発と、動物実験において個々の脊髄神経根糸の刺激-インパルス関連の計測を行った。1)人工シナプスのプロトタイプ開発微細放電加工機を用いて、直径1mm、幅200μmのU字型の電極を試作した。この電極を2個スペ-サで接続し、双極電極とした。現在、動物実験で検証を行っている。2)脊髄神経根糸の神経支配領域の同定法開発パーソナルコンピュータに高速の多チャンネルA/Dコンバータを実装し、多チャンネル同時加算平均が可能なデータ処理装置を製作した。さらに、この装置を駆動するための計測ソフトウェアを開発した。多チャンネル硬膜外カテーテル電極とこのデータ処理装置を用いて、麻酔下の実験動物(ヤギ)で皮膚刺激に対する支配神経根の同定を行った。皮膚刺激の位置を胸壁上で移動させると、個々のチャンネルに導出される波形の極性が変化し、この結果から皮膚の特定領域を支配している神経の脊髄での神経根の同定が可能であることがわかった。さらに、同定された神経根の個々の根糸に電極を接続し、この神経根の皮膚支配領域の中で刺激位置を変化させると、個々の神経根糸の間で位置によるインパルス強度変化が観察された。この結果から、皮膚においては、神経根糸レベルで支配領域が同定できることが示唆された。
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