研究概要 |
私たちが発見した新型のプロテアーゼインヒビターは,インヒビター領域のN末端側に接着領域を持ち,働き場所に共有結合でとどまるという風変わりなタンパク質で,その働きのみならずドメイン構造の観点からも注目を集めている。このファミリーにはいくつかの同族分子が存在するが,そのうちの2つ(WAP-1,WAP-2)について局在部位を明らかにするとともに,応用の観点から興味が持たれる接着領域(セメントイン)にグリーン・フルオレッセント・プロテイン(GFP)をくつけた融合タンパク質を遺伝子工学的に生産した。成果の概要を以下に示す。1)インサイチュ ハイブリダイゼーション及び抗体染色の結果,エラスターゼ阻害能を有するエラフィン(WAP-1)は気管の上皮細胞と大腸の陰窩(Crypt)に多く発現していることが明らかになった。一方,2)WAP-2の機能は不明であるが,血中にかなりの量が存在することから,創傷治癒・炎症との関連で注目されている。インサイチュ ハイブリダイゼーションの結果,WAP-2は小腸の陰窩細胞(エンテロエンドクリン細胞)で作られ,血中に分泌されているらしいことが判明した。応用面の成果として,3)トランスグルタミナーゼによって架橋接着されるセメントイン領域に,蛍光を発するタンパク質として最近重宝されているGFPを遺伝子工学的にくつけた融合タンパク質の調製に成功した。タンパク質分子をセメントインによって接着する際のセメントインの振る舞いをモニター出来ることになり,今後の研究を加速するものと期待される。
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