研究概要 |
私たちが見つけた糊代をもったタンパク質(トラッピン)に関する基礎と応用研究を行い以下の成果を得た。 (1) トラッピン分子中の糊代部分すなわちセメントイン領域を遺伝子工学的に作り,性質を明らかにするとともに,二次構造を決定しランダムコイル構造をとっていることを明らかにした。 (2) トラッピン遺伝子は,エクソンよりもイントロンの方がよく保存されているという際だった特徴を有する。これは通常の遺伝子とは全く逆であり,どのようにしてそのようなことが起こったかは興味深い問題である。イボイノシシのトラッピン遺伝子を詳細に解析し,この問題を解決した。すなわち,ジーンコンバージョン(gene conversion)によってイントロンの配列がもとのものと置き換えられている結果,イントロンにたまった変異が消去され,見かけ上,不変のように見えていることが明らかになった。 (3) 糊代部分を利用して,タンパク質架橋酵素トランスグルタミナーゼの簡便かつ高感度検出法を開発した。すなわち,糊代部分に蛍光性のGFP(green fluorescent protein)をつなげた融合タンパク質を作製したところ,トランスグルタミナーゼの優れた蛍光性基質となり,組織抽出液中及び組織切片上のトランスグルタミナーゼを容易に検出できることが明らかになった。 (4) アルツハイマー病等の中枢神経疾患におけるトラッピンとトランスグルタミナーゼの関与を調べるために,変性脳におけるこれら分子の局在を免疫組織化学的に調べ,老人班の形成に関与するらしいことをつきとめた。
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