研究課題/領域番号 |
08558101
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 展開研究 |
研究分野 |
医用生体工学・生体材料学
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
岡野 光夫 東京女子医科大学, 医学部, 教授 (00130237)
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研究分担者 |
坂井 秀昭 花王(株), 主任研究員
大和 雅之 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (40267117)
菊池 明彦 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (40266820)
横山 昌幸 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (20220577)
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研究期間 (年度) |
1996 – 1998
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キーワード | 温度応答性高分子 / 温度応答性表面 / ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / 細胞培養 / 細胞培養床 / 細胞シート |
研究概要 |
正常臓器がもつ高度の機能を再現するハイブリッド型人工臓器の実現には、肝小葉のような組織特異的な微細構造の再構築が必須であると考えられる。多くの病変部位では細胞シートが断片化し構造が破壊されていることから、このような構造の維持が各組織がもつ機能の遂行に必須であると思われる。酵素処理等によりばらばらにした細胞ではなく、細胞シートを部品として用い組織構造を再構築することが必須である。温度に応じて親水性を可逆的に変化させる高分子(ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド))を電子線照射により培養皿にグラフトして温度応答性培養表面を作製した。コンフルエントに達した後細胞シートとして回収し、これを組み合わせて組織構造を再構築する方法を検討した。グラフト量を制御することにより、37℃では市販の細胞用培養皿と同程度の弱い疎水性を示し、下限臨界温度(約30℃)以下では親水性を示す温度応答性培養表面の作製に成功した。様々な細胞が、37℃で市販の培養皿上と同様に接着伸展増殖したが、その至適グラフト量は細胞種により異なっていた。培養温度を下限臨界温度以下にすると、細胞は培養表面より回収された。このとき細胞-細胞間接着や細胞-細胞外マトリックス(ECM)間の構造は維持されており、まったく非侵襲的に細胞を回収することができた。培養の間に形成沈着したECMも細胞底面に接着したまま回収された。コンフルエントに達した後、低温処理することにより、細胞間接着で個々の細胞が連結した一枚の細胞シートとして回収できた。肝実質細胞と内皮細胞を別々の温度応答性培養表面上で培養し細胞シートとして回収した後、両シートを重ねると、短時間のうちに接着し、肝小葉にきわめてよく似た積層構造を維持したまま培養を継続できた。この共培養系においてそれぞれの細胞は他を浸食することなく共存し、毛細胆管やディッセ腔など超微形態的にも肝小葉が備える特徴を再現していた。酵素処理した細胞を用いると積層構造ができないことから、細胞-細胞間接着と、接着剤として機能するECMが必須であることが示唆された。温度応答性培養表面から非侵襲的に回収した細胞シートは、組織構造をそなえるハイブリッド型人工臓器の開発において有効に利用可能である。
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