研究概要 |
平成8年度は分離補助循環用カテーテル(IA3BP)の試作とその評価を行ったので報告する.我々の考案した分離補助循環法とは,動脈系を横隔膜レベルで遮断し,上半身は大動脈内にバルーンパンピング(IABP)補助下の自己心によって灌流し,下半身は経皮的心肺補助法の血液ポンプによって灌流する新しい補助循環法である.この方法の利点は,1)自己心は血液ポンプからの干渉から免れるため駆出が容易となる;2)個々の症例に応じた循環制御が可能,例えば心臓の後負荷軽減のために上半身動脈圧を低く,腎機能の維持・改善のために下半身動脈圧を高くするなど;3)上半身の動脈系は閉鎖循環系となるので,その圧・流量データから心ポンプ機能回復の判定が容易となり,補助循環離脱時期の適切な判定が可能となる,などがある.IA3BPは主要バルーンと2個の小バルーンからなり,それぞれIABP用,遮断用として機能する(2個の小バルーンで交互に遮断し,脊髄動脈閉塞を防止).まず,成人用IA3BPを2型試作し(バルーン材質:ポリウレタン,カテーテル材質:ポリウレタン被覆ナイロン),基本的な動作確認と遮断用バルーンの形状(球状,滴状,饅頭型)を検討した.この形状は,血管挿入の容易さ,加工性などから球状に決定した.次に,動物実験用IA3BPを3型試作し(容量は主要,遮断用バルーンでそれぞれ12cc,2cc),主要バルーンの心拍応答性を模擬回路(80bpmで駆動)にて検討した.結果は,シャフト部分の外径が8Frでバルーン部分のシャフト外径が7Frの型が市販品(ゼメックス30cc:9Fr)と同等以上の応答性を示した(拡張時間96msec,収縮時間111msec).シャフト径が7Frの型は応答性が前者の約半分で,シャフト部分を3腔にするためには最低限8Frのサイズが必要と判った.遮断用バルーン駆動装置も現在開発中である.
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