研究概要 |
平成10年度は,平成8,9年度で開発した分離補助循環用カテーテル(IA3BP)およびその駆動装置を動物実験で使用し,機能および安全性評価と,分離補助循環法全体の総合評価を行った.分離補助循環法とは,動脈系を横隔膜レベルで遮断し,上半身は大動脈内バルーンパンピング(IABP)で,下半身は経皮的心肺補助法で補助する新しい補助循環法である.使用IA3BPは動物実験用試作品で,パンピングバルーン(容量は12cc)と2個の遮断用バルーンからなり(2個のバルーンで交互に遮断し,前脊髄動脈閉塞を防止;容量はそれぞれ4cc),非バルーン部分シャフト外径が8Frでバルーン部分シャフト外径が7Frに先細りしている型である. 雑種成犬5頭を用い,右房脱血,右大腿動脈送血で人工心肺を装着し,虚血にて心不全を作製した.左大腿動脈からIA3BPを挿入し,下行大動脈にパンピングバルーンを留置した.2-3時間程度IA3BPを駆動させた.遮断バルーンの駆動はすべての例で成功したが,虚血性心不全による心電図変化が強い例ではパンピングバルーンのトリガ不良のためIABP効果が十分に得られなかった.すべての例を犠牲死させ,バルーン留置部を観察した.肉眼的には全く異常は認められなかった.今回の実験では前脊髄動脈閉塞による下肢麻痺の有無は確認しなかった.なぜならば,今回のような実験では最終的に著明な腹水貯留などで補助循環の離脱は困難であるため,実験中に麻酔を切り実験動物を覚醒させ,下肢麻痺の有無を確認しなければならない.これは動物愛護の観点から不適切と考えたので下肢麻痺の確認作業を行わなかった.今後の課題として,動物実験でIA3BP駆動後,分離補助循環法から離脱させ,閉創し動物を覚醒させ,神経麻痺の有無を確認する必要がある.
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