研究概要 |
RNAを塩基配列特異的に切断する人工リボヌクレアーゼが開発されれば,その意義は極めて大きい。我々は,すでに,エチレンジアミンやジエチレントリアミンのようなオリゴアミン類を触媒として用いると,温和な条件でRNAが容易に加水分解されること報告している。本研究では,種々のアミン類によるRNA加水分解反応に対する動力学的な検討を行ない,ジアミンによるRNA加水分解の反応機構を明らかにした。生理条件下におけるジアミン類によるRANの加水分解は,ジアミン中のニュートラルなアミノ基がRNAの2'-位のプロトンを引抜くと同時に,もう一方のプロトン化したアミノ基が酸触媒として効率的に働くことにより進行すると推定される。また,オリゴアミンをターゲットRNAの特異的な位置に結合する塩基配列認識部位(合成DNAオリゴマー)の5'-末端に結合することで,ターゲットRNAを塩基配列特異的に加水分解する人工リボヌクリアーゼを構築することにも成功した。 さらに,側鎖にベンジルエステルやエチルエステルをもつホスホロアミダイトモノマーの合成に成功した。このアミダイトを用いて,塩基配列認識部位の中央にオリゴアミンを配した人工リボヌクレアーゼの構築を行なった。本人工リボヌクリアーゼを用いてRNAの加水分解を行なったところ,塩基配列認識部位とオリゴアミンを結合するリンカー部分の揺らぎを最小限に押えられ,標的とした位置でより効率的にターゲットRNAが加水分解されることが明らかとなった。
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