動物の消化管内には多くの微生物が生息し、いろいろの役割を果たしているが、この微生物フローラの撹乱は、動物の健康を害し、栄養素の利用性の低下に連なる。本研究では、高山から低地に移して飼育されるライチョウのもっとも多くの微生物が生息している盲腸内フローラに着目し、人工的に低地で飼育しているニホンライチョウの盲腸内フローラの改善の可能性を検討した。 1. 低地飼育ニホンライチョウ(Lagopus mutus japonicus)の盲腸内フローラを調べた結果、有害菌であるEnterobacteriaceaeおよびBacteroidaceaeが最優勢で存在し、一方有用菌のBifidobacteriaは少数しか存在せず、Lactobaciliにいたっては全く存在しないことが初めて明らかになった。 2. このような低地飼育ライチョウの腸内菌叢の改善に緑茶ポリフェノールとフラクトオリゴ糖が有効かどうかについて調べた結果、この両物質は腸管内の有害細菌であるEnterobacteriaceaeやBacteroidaceae、および腐敗産物のフェノールを減少させ、有用細菌であるBifidobacteriaや酢酸を有意に増加させることをライチョウで初めて明らかにした。 3. これらの実験から、ニホンライチョウの低地飼育で多く見られる下痢の防止と安定飼育に緑茶ポリフェノールとフラクトオリゴ糖が有効な飼料添加物であることが明らかになり、低地人工飼育のための人工飼料にこれらを添加することにより飛躍的なライチョウの人工増殖が可能であることを示した。
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