研究概要 |
生体適合性を持つ磁気発熱材料の開発とがんの温熱療法への応用に関して以下のような結果を得た。 1.非常に高感度な磁気測定装置として、磁気力-効果が測定できる「磁気光学効果測定装置(日本分光株式会社)」を購入し、高感度磁気測定系を完成した。 2.生体適合性を持つバルク材料としてMg_<1-x>A_<2x>Fe_2O_4(A=K,Na,Li)の試料を作製し、磁性を調べた。試料作製ではスピネル構造が維持される範囲内で組成を変化させた。磁気測定と発熱量の測定を行った。ヒステレシス損と高周波発熱量とはよく一致し、いづれもヒステレシス損発熱を起こすことを確認した。キューリ-点(Tc)はK,Na,Liのいずれも約350℃でMgFe_2O_4より20℃程度低くなった。 3.MgFe_2O_4の微粉末化を試みた。真空中およびAr雰囲気中で蒸発法により作製した。しかし、組成分析とX線解析の結果、Mgの含有量は非常に少なく、大部分はFe_3O_4とFe_2O_3の混合状態であった。これはMgの融点が低く、蒸気圧が高いためと考えられる。そこで、Fe_3O_4の微粉末(粒子径5nm〜50nm)について磁気測定を行って、Tcと結晶粒径の関係を調べた結果、粒子径が10nm以下になるとバルクのFe_3O_4のTc(約500℃)よりかなり低くなる(300〜400℃)ことが判明した。 4.Coの微粒子をAr雰囲気中で蒸発法で作製し(10nm〜100nm)、粒子径と磁化、Tcの関係を調べたが、いずれもバルクと一致した。Tcを変化させるためには、さらに小さい微粒子となる必要があることが判った。Coの場合は作製中に酸化が起こり粒子の表面がCoOになるが、これを利用する方法を考えている。 5.種々の薄膜を作製しTcを測定した。TcはいずれもRT〜100℃程度であることが判明した。今後生体適合性のある薄膜を作製する計画である。
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