研究概要 |
本研究では、がんの温熱療法に使用するインプラント磁性材料の開発研究を行った。高周波磁界中(230kHz)でヒステレシス損発熱を起こし、キューリー温度(Tc)が低く、発熱量が大きくかつ生体適合性を持つ材料を研究した。主な研究成果をまとめると次のようになる。 1) Mg-Fe-M-O系(M=Ti,Si,Ca,K)酸化物の磁気特性と発熱特性を研究した。FeをTiで置換したMg_<>1+xFe_<2-2x>Ti_xO_4においてx=0.0ではTc=635Kで、発熱量Qは磁場H=1000eで16W/gであった。TCはxの増加とともに単調に減少し、x=0.5で200Kとなり、Qは3W/gまで減少した。Ti置換系は温熱療法インプラント磁性体として適しており、他の置換系はTcが高く、発熱量は小さいことが分かった。 2) Fe_3O_4超微粒子の研究では、直径が20nm程度以下になると、Tcはバルク(850K)より低しはじめ、5nmで660Kとなり、酸化物の超微粒子化によりインプラント材料を開発できることが分かった。 3) Coの超微粒子を気相蒸発法と、化学法で作製した。直径の小さいCo微粒子の作製は大変難しく、最も小さくて20nmの直径であった。しかし、その試料のTcはバルクと同じ程度(1388K)で、非常に高く、Co微粒子は不適当と考えられる。 4) 原子層を制御した金属人工格子を作製し、Feの超薄膜のTcを検討した。α-Feの超薄膜では厚さが1.3原子層で350Kまで低下した。強磁性γ-Feの超薄膜では、0.8原子層で約300Kとなった。しかし,超薄膜はTcは適当であるが、1回に作製できる量が少なく温熱療法への応用には量的に厳しいことが分かった。
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