研究概要 |
今年度は,主にエリュールJ.Ellul,オトワ G.Hottois,シモンドン G.Simondon,スチ-グレル B.Stieglerの読解,比較対象の作業をはじめ,今まであまり組織的に読んだことのなかった戦後フランス思想の一側面を体系的に把握することに努めた.その結果,フランス思想による技術の問題の抑圧を再確認できたが,とりわけSimondonの「技術的事物の存在態様」とStieglerの技術論から見た時間概念には示唆的なものがあった. また,今までに扱ってきた思想家において異化に技術の問いが抑圧されているかを再確認,研究ノートのレベルではメルロ=ポンティとハイデッガ-における技術論をまとめた(未発表).また,技術の力を高く評価しながらもみずからの政治概念からは徹底的に技術の影響力を排除するハンナ・アーレントに関する論文を準備中である. 本課題研究のもう一方の柱である「非西洋」ついては,「共和国の二重の身体」(『帝国とは何か』岩波書店,所収)の題のもとに,脱植民地化と文化的人種主義を扱った論考をまとめた. 最後に,データベース作成については,スキャナーとOCR(光学文字読み取り)ソフトは導入したが,微妙な調整が必要なことが判明し,次年度から本格的に始めることにする.
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