1)大阪大学が所持するウィトゲンシュタインのコ-ネル・コピーから手書き原稿を解読、その結果を機械入力する作業はMS124についてはほぼ完了した。これについては東京都立大学の甲斐博見教授がイギリス滞在中に独立して行った研究成果と照合することにより得るところがあった。MS124については当初の方針通り、MS124を初めとしたクロス・リファレンスを行いつつ、順次テキストをつないでいく作業が順調に進行中である。 2)ウィトゲンシュタインの出版済みの著作のデータベース(既購入)及び刊行中のウィーン版ウィトゲンシュタイン著作集をも参照しつつ30年代当初の未公刊原稿と照合する試みについては、一部大学院生の助力を求めつつ、ブラウア-のウィトゲンシュタインに対する影響の度合いを吟味した。この件について他の研究者との意見を交換したが、確定的な結論を得るに至っていない。 3)ウィトゲンシュタインとウィーン学団との関係については一定の成果が得られたので、これを京都科学哲学コロキアムの例会で報告、引き続いて日本科学哲学会(平成8年11月、香川大学)のワークショップで提題者として報告、それに推敲を加えた論文を大阪大学人間科学部紀要で公表した。 4)ウィトゲンシュタインの思想の変遷を、統計的手法で評価する可能性とその場合の留意事項について、計算機科学の専門家と意見を交換した。 5)次年度当初にMS124草稿のプリントアウトを関係研究者に回覧し、この際のこの草稿のウィトゲンシュタイン研究上の意義について討議する予定である。
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