研究課題
基盤研究(C)
本研究は、古代から現代に至る西洋哲学史全般の研究に基づいて、近代科学と科学的合理性の起源と本質を解明し、西洋における理性の概念と科学的合理性の関係を明らかにしようとするものである。それによって、今日各方面で信頼が揺らいでいるといわれる科学的合理性の意義と限界を明確に把握することを目指す。第一年度である本平成8年度においては、西洋哲学史の各時代における理性と合理性の概念の解明を課題とし、古代哲学(塩出)、中世哲学(川添)、近世哲学(小林)、哲学的人間学(半田)、科学史・科学哲学(中才、小林)、現代倫理学(美濃、土屋)の各分担に従って研究を進めた。発表された主な研究成果としては、小林はデカルトの形而上学と自然学の意義を科学史の文脈において明らかにするとともに、近世から現代に至る広範な科学哲学研究の成果をまとめた。半田はフォイエルバッハの『理性論』とそれに関する諸研究文献の批判的検討を通して、フォイエルバッハの「自然」概念と「理性」概念の解明を試みた。土屋は現代生命倫理学における主要課題の一つである「生殖技術」をめぐり、「理性的な個人による自己決定」という倫理学的概念の有効性と限界について考察した。次年度以降においては、各自の分担研究をさらに進めると同時に、各研究成果の統合を図り、近代および現代の科学的合理性の本質の全体的解明に向かう。
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