研究課題
基盤研究(C)
本研究は、古代から現代に至る西洋哲学史全般の研究に基づいて、近代科学と科学的合理性の起源と本質を解明し、西洋における理性の概念と科学的合理性の関係を明らかにしようとするものである。それによって、今日、各方面で信頼が揺らいでいると言われる科学的合理性の意義と限界を明確に把握することを目指す。本平成9年度においては、前年度に引き続き、西洋哲学史の各時代および各分野における理性と合理性の概念の解明を主たる研究課題とし、各研究分担者がそれぞれの担当分野(塩出-古代哲学、川添-中世哲学、小林-近世哲学、半田-哲学的人間学、中才および小林-科学史・科学哲学、美濃および土屋-現代論理学)に関する研究に個別的に取り組んだ。各研究成果を統合して、近代および現代の科学的合理性の本質を全体的に解明する作業の大半は、次年度の課題とせざるを得なかった。発表された主な研究成果としては、代表者である小林は、デカルトの形而上学に焦点を絞り、スコトゥスとの比較などを通して、デカルトにおける神と人間理性の関わりの特質を明らかにした。塩出は、『カルミデス』篇の精密な読解を通して、プラトンが同対話篇において、ソクラテスの問答法的ロゴス(エレンコス)の問題点と限界を明らかにすることによって、積極的な「知」を可能とする新たなロゴスの探求への第一歩(ディアレクティケに結実することになる)を踏み出していることを示した。中才は、『人間本性論』第I巻・第IV部の「感覚能力に関する懐疑論」の検討を通して、ヒュームがその懐疑論にもかかわらず、「生き生きとした理性」という概念に基づいて、どのようにして自然主義を維持し得たのかを解明した。美濃は、アンスコムとデイヴィドソンの行為論の批判的検討を通して、行為の合理性に関する基本的洞察を得ることに努めた。
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