研究概要 |
本平成8年度においては,主として「カントとドイツ観念論における人間観」を研究対象としたが,実質的には,フィヒテの知識学に示された人間観の研究にその主力が,まず注がれた。その際,特に,後期フィヒテの知識学が研究対象に据えられ,その数多くの遺稿のなかでも,きわめて重要な1804年の『知識学』に焦点を合わせて,徹底的な読解の作業が試みられた。周知のように,この遺稿はきわめて難解である上,多数の研究者もドイツ本国で刊行され,その哲学的内容が種々検討されてきている。それらの成果を踏まえ,「1804年の『知識学』と現象学」という形で,研究成果をひとまず纏め上げることができた。この成果の基本趣旨は,平成8年11月16日の人間観フィヒテ協会のシンポジウムで報告されたが,詳しい内容は,それとは別に,約110枚(400字原稿)の論文として仕上げられた。それを本年の研究成果として,ひとまず,仮の印刷をして記録にとどめておく。他日,より全体的なフィヒテ研究のなかに活かすつもりである。そのあと,今度は,一気に現代に飛んで,ハイデッガ-のヒューマニズム書簡の翻訳・注解・分析の仕事に取り組んだ。次年度にこれは公刊される予定である。
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