研究課題/領域番号 |
08610014
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研究種目 |
基盤研究(C)
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
荻野 弘之 上智大学, 文学部哲学科, 助教授 (20177158)
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研究分担者 |
塩川 千夏 上智大学, 文学部哲学科, 非常勤講師 (10266059)
丹木 博一 上智大学, 文学部哲学科, 非常勤講師 (30222128)
オルバーグ エレミア 上智大学, 文学部哲学科, 専任講師 (00266058)
大橋 容一郎 上智大学, 文学部哲学科, 助教授 (10223926)
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キーワード | 自然神学 / 意味論 / 行為論 / アウグスティヌス / 原罪 / ドイツ観念論 / 聖書解釈 / 言浩論 |
研究概要 |
研究計画の第二年目に当る97年度は、前年の成果を深化させる方向で、全般に着実な進展を見た。 (1)アウグスティヌス研究では、4世紀に至る教父的聖書解釈(特に創世記)の発展史的研究が現代聖書学の方法との対比によってまとめられ、ほぼ結論に達した。同時に、死生観に関して『告白』における<二人称の死>(この表現は柳田邦男『犠牲』による)の問題が新たに開拓され、現代の生命倫理学と対話する場面が開かれつつあり、詳細は次年度に東京大学出版会より共著として刊行される予定である。(以上荻野担当) (2)西洋近代の個人主義の伝統と対比されがちな没論理的現代日本の倫理状況については、坂口ふみ『個の誕生』(岩波書店)を素材に個人倫理の構成における論理の機能が分析され、近代的自我の両義牲が強調された。新カント主義論理学の1920年代ドイツにおける展開を踏査することが次年度の課題である。(以上大橋担当) (3)近世哲学史における自然神学の歴史的研究の分野では、新たにヘーゲル『精神現象学』冒頭の6章分を、創世記J資料の堕罪物語の註釈として読むという斬新な構想を示し、哲学と神学の関係に新たな照明を当てる研究として、ヘーゲル研究者の間で反響を呼んだ。(以上オルバーグ担当) (4)現代の現象学的人間論の分野では、フッサール現象学の基本的方法である「還元」の構造を究明し、エポケ-との類似性をもつ懐疑、及び美的中立変様と比較しつつ、真実/虚偽、現実/虚構などの様相転換を通して、現実を反省する態度が生じる契機を考察した。還元の特異性は「対象」とその「現出」の二項図式を超える点にあり、芸術の虚構的表現の分析が今後推進されるべき問題の焦点である。(以上塩川担当) (5)テクストデータベースの活用については、荻野が96年8月に上智大学の学内共同研究の一環として新規ホームページを開設し(http://pweb.cc.sophia.ac.jp/~h-ogino/html)、内外の研究者との連絡を図る。特に米国タフツ大学のPerseus-projectとリンクを張り、また国内の多言語入力方式を模索するmule-projectとも連絡を取っている。
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