前年度中に発刊した『春秋弁疑訓解(全二冊)上編』に引き続き、『春秋弁疑訓解(全二冊)下編』の原稿を完成させ、これを刊行させた。体裁は、B5版、全129頁、末尾に「唐代儒教関係研究文献目録」を収載した。これで唐の陸淳の『春秋』関係著述三作のうち『春秋啖趙集伝纂例』と併せ二作までの訳注製作の作業が完了したことになる。残る『春秋微旨』についても訳注の作業に入っており、次年度中にもその刊行が実現できる状態になりつつある。また、前年来未解決であった現行本『春秋啖趙集伝纂例』の中に後人の手が加わっていることについてはこの本が出来てまもない時期にそれがなされていることは確認できたが、それが誰なのかはまだ特定できていない。啖助らの『春秋』学の特質の分析についても伝例の整理を通じて概ねその特徴が当時の李王朝の政治形態や社会的な諸般の事情と密接にからんでいることはおおよそ検討をつけることができるまでに至っているが、その具体的な状況の提示は現段階では困難である。すべて訳注完成後の詳説を期すつもりである。なお、この作業を続けている過程で、このタイトルとはいささかずれるが儒教そのものの定義に関しても私なりに気づくところがあって、それを原稿に起こすことができた。今年度の報告の中に含めておく。
|