インド・ケ-ララ州のジャイミニ-ヤ派サーマヴェーダ歌詠伝承に関する文字資料(おもに歌曲集の古写本と現地伝承者たちの筆記ノート)と音声映像資料(伝承者たちによる歌詠行為のオ-ディオ録音とヒデオ記録)を統一的に整理、分析、編集することによって、現存サーマヴェーダの基礎資料を集成することを目的とする本研究の2年目である平成9年度に、以下の研究作業を行なった。平成8年度に行なった資料間の対応関係と歌曲集の構成の確定をふまえて、それぞれの資料に対して分析作業を行なった。音声映像資料に関して、歌曲集を構成する最小単位である曲(サーマン)ごとに、曲名・歌詞・旋律・時間等を調べ、項目をたてて内容を記録した。文字資料に関して、昨年度に開始した歌曲集の筆記ノートのコンピュータ入力を継続して行なった。この入力作業と平行して、入力したテキストファイルをもとに、出版されているこの派の歌詞集と他派の歌詞集および歌曲集と比較しながら、ジャイミニ-ヤ派の歌曲集のテキスト(歌詞にあたる元の詞節を歌詠用に変形したもの)を確定する作業を進めた。さらに、同じく歌曲集に関して、ヘルシンキ大学のA.パルポラ教授が入手した筆記ノート2点と音符を判ったタミル系統の写本の写しと、ユトレヒト大学図書館に保管されている故W.カ-ラント教授よる転写ノート(旧インド省図書館の複数の写本を比較しローマ字に転写したもの)の写しという貴重な追加資料を得て、それらの整理と分析も行なった。
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