ジャイミニーヤ派サーマヴェーダ歌詠伝承に関する文字資料と音声映像資料を統一的に整理、分析、編纂することによって、現存サーマヴェーダの基礎資料を集成することが本研究の目的である。中心となる資料は、研究代表者(藤井)自身が南インドの現地調査で収集した現地伝承者の筆記を含めた写本資料、伝承者の歌詠を収録した録音テープとビデオテープ、他の研究者が収集した資料のコピーである。 年次にそって以下の3段階に分けて研究を遂行した。 1.各資料を作業可能な形に処理した上で整理作業を行なった。資料間の対応関係を逐次確認することによって資料内部の順序の乱れを正して、資料全体の構成を確定した。 2.分析作業として、写本資料に関しては、全体を素読して内容一覧を作成するとともに、主テキスト(サンヒター)に限って各種の写本を比較してテキストの確定に取り掛かった。音声映像資料に関しては、最小単位であるサーマンごとに曲名・歌詞・旋律・時間等を調べ、項目をたてて内容を記録した。 3.資料を内容と伝承地域に基づいて分類し、現存のジャイミニーヤ派サーマヴェーダの基礎資料集として編纂する作業を行なった。音声映像資料については、特に劣化を防ぐために一部デジタル化を行なった。 以上の作業とともに、資料の有用性を高めるために、主テキストの一部をコンピュータに入力した。編纂資料とデジタル・テキストは、文献学と音楽学を含めた今後のサーマヴェーダ研究の一次資料となるものである。研究成果報告書として、現存するジャイミニーヤ派サーマヴェーダ歌詠伝承と基礎資料を詳説した小冊子を提出する。
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