研究概要 |
本年度の研究実施計画として掲げたのは,1)中央アジア出土の仏教梵語写本の概観,2)「般若経」文献を中心とするサンスクリット写本(マイクロフィルム)と,その関連文献の収集である.このうち後者に関しては,かなりの成果を上げることができた. 今回の調査対象である中央アジア出土のサンスクリット仏教写本は,19世紀〜20世紀初頭の欧米諸国の探検・調査によって,現在はロシア,イギリス,フランスを中心とした欧米の研究所,図書館に多く保存されている.そこで本年は,いまだほとんど手が付けられていないロシア科学アカデミーの写本について,調査することにした. 同アカデミーのサンクトゥ・ペテルブルク支部にある東洋学研究所には未調査の写本がかなり残っているが,旧知のG.M.ボンガード・レヴィン博士を介して,サンスクリットの般若経写本を調査する許可を得ることが出来た.その調査は始まったばかりだが,取りあえず,すでに原本が消失されているとされていた,Silaparamita-sutra(「戒波羅密經」)の断片を発見し,これを1997年度に発表し,その漢訳とチベット訳との比較研究を次年度の研究成果として発表の予定である. また,その他のマイクロ・フィルムの入手を行なうために,海外の研究者,研究機関との情報交換を積極的に行なった.その結果,インド・ニューデリーにある国立古文書館に保存されているギルギット出土の仏教梵語写本のうち,般若経のサンスクリット写本のマイクロフィルムを入手することができた.これらについては,次年度の研究に備えて,少しづつ整理を行なっている.
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