研究概要 |
本年度は昨年度に入手できなかった資料の収集とそれらの調査・分析を行なった.最初に計画していた中央アジア出土の梵語仏典の写本のマイクロフィルムやマイクロフィッシュに関してはさしたる成果を挙げることは出来なかったが,既に収集した文献に対応する関連の論文や研究図書についてはまとまった収集を行なうことができた.これによって,体系的な研究の進展に寄与することができた. また,内外の研究者・研究機関との情報交換によって,最近あらたに発見され,研究されつつある仏教写本の状況について調査することができたが,写本を通して中央アジア仏教の展開を考察するという意味では予想外の成果となった.その一部は本年度の研究発表リストの著書の中にも触れておいたが,中央アジア仏教全体の展開については最終年度に報告するつもりである. また6月下旬には,大谷大学で開催された第48回日本印度学仏教学会学術大会において,写本の一部を使った研究発表を「Prajnaparamitaの四つの語源解釈」と題して行なった. その他の成果は昨年度から関わってきたロシア科学アカデミーのサンクトゥ・ペテルブルク支部にある東洋学研究所蔵の一写本についてである.この写本についての研究成果は昨年度に予定していたが,ようやく本年度5月にウイーン大学の雑誌上で公刊できた.この論文に就いては研究発表リストに記してあるが,現在も引き続いて写本とチベット語訳,及び漢訳との比較研究を行なっている.
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