本年度は研究代表者がオリッサ州で収集した図像資料を、パーソナル・コンピュータを用いてデータベース化した。ラトナギリ、ウダヤギリ、ラリタギリの三遺跡からの出土品と、オリッサ州立博物館の所蔵品を中心に、さらにパトナ博物館、カルカッタのインド博物館、ニューデリーの国立博物館などに所蔵されるオリッサ州出土の作品もこれに加えて作業をすすめた。このうち、35mmのカラー・スライドに関しては東京外国語大学アジアアフリカ言語文化研究所の協力を得て、CD-ROMに記録することができた。さらに、各作品の主題、規模、表現方法、年代、出土地、素材、様式等に関するデータを整理し、画像データとリンクするかたちでデータベース化をすすめた。また、インド国外に流出した作品についても、すでに刊行されている研究所の図版から情報収集と整理を行い、この地区の図像作品を網羅するかたちでリストを作成した。オリッサ州出土の作品に関するこれらの作業と平行して、パ-ラ朝期の密教の中心地であったベンガル地方とビハ-ル地方の作品についても、類似のデータベースを構築し、次年度以降の比較研究のための基礎作業を行った。今年度はこのうち、オリッサ州立博物館に所蔵される主要な密教美術に関して、基礎的な情報と写真図版を刊行した。同館はオリッサ州出土の貴重な密教美術作品を多数収蔵しているが、そのほとんどはこれまで公表されていなかった。なお、ラトナギリ以下の3遺跡を中心としたカタック地区全体の研究成果についてはほぼ刊行準備が整い、次年度の早い時期に発表を予定している。
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