本研究は、近年世界的な成長が注目されているキリスト教の聖霊運動を対象に、これを「民俗・民衆宗教」の研究視角に位置づけることによって、その世界観・救済観の特徴、日本の宗教風土における受容基盤などを、具体的現象に即して考察することを課題としている。 本年度は、日本においてこの運動の顕著な展開が見られる沖縄県を対象に、7・9・3月の3回、通算25日程度の現地調査を実施した。調査の具体的内容としては、聖霊運動を活発に担っていると見られる教会を中心に、聖職者・信徒・求道者などへの面接聴取、教会記録等の収集、超教派的聖会や教会ごとの行事、各種ミニストリーなどへの参与観察を行なった。本研究では特に、この運動がユタ、カミンチュなど在来の伝統的宗教者が担う宗教的表象様態に支えられている点に注目し、牧師や信徒による聖霊・悪霊体験、土地や屋敷の聖別祈祷、悪霊祓い、病の癒し、インナーヒーリング、等の諸活動に焦点を合わせ、多くの具体的事例の記録収集に努めた。この研究成果は、全国学会誌『宗教研究』71-1に発表予定である。 日本本土では、96年5月に結成された「日本リバイバル同盟」の動向に注目し、そこに参画した甲信地方の教会の調査を8月に実施した。これらと連動するペンテコステ・カリスマ・第三の波運動などの新展開についても、基本資料の収集を続けている。その他、近代以降の日本キリスト教史における聖霊主義的系譜の研究として、「原始福音(キリストの幕屋)」に関する諸資料を多数収集した。
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