本研究は、近年世界的な成長が注目されているキリスト教の聖霊運動を対象に、これを「民俗・民衆宗教」の研究視角に位置づけることによって、その世界観・救済観の特徴、日本の宗教風土における受容基盤などを、具体的事例に即して考察することを課題とした。 本年度は、当研究の二年目(最終年度)にあたるため、昨年度に着手した実地調査をさらに継続させるとともに、そこで注目された諸現象のいくつかについて、重点的な掘り下げを試みた。具体的には、聖霊運動を活発に担っていると見られる中部地方、沖縄地方の複数の教会について、聖職者・信徒・求道者などへの面接聴取、教会記録等の収集、超教派的な聖会や教会ごとの行事、各種ミニストリーなどへの参与観察を行った。本研究では特に、この運動が在来の巫者的宗教者が担う宗教的表象様態に支えられている点に着目し、牧師や信徒による聖霊や悪霊の体験談、土地や屋敷の聖別祈?、悪霊の追いだしのミニストリー、病人の癒し、インナーヒーリング、等の観念や実践に焦点を合わせ、多くの具体的事例を収集するとともに、これを在来の宗教文化との葛藤・融合の視点から、分類整理した。 具体的な研究成果は、研究報告書としてまとめたほか、日本宗教学会の学会誌『宗教研究』に掲載された論文などに発表した、さらに、国立日本文化研究センターから平成10年に刊行が内定している論文集にも、本研究の成果の一部を発表する予定である。
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