研究課題/領域番号 |
08610037
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
篠 憲二 東北大学, 文学部, 教授 (20086119)
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研究分担者 |
熊野 純彦 東北大学, 文学部, 助教授 (00192568)
清水 哲郎 東北大学, 文学部, 教授 (70117711)
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キーワード | ホモ・モルタリス / 終末期医療 / 哲学的人間学 / 尊厳死 / 安楽死 / 消極的行為 / 絶対的他者 / QOL |
研究概要 |
最終年度にあたる本年度は、研究代表者ならびに研究分担者が、相互の批判的検証を介して、それぞれの研究成果の取りまとめをおこなった。公開の研究会としては、「ホモ・モルタリス(死すべき人間)の現象学」(篠憲二)、「終末期医療におけるQOL維持をめぐる問題点」(清水哲郎)、「絶対的他者としての死と他人」(熊野純彦)、の計3回を開催し、ひろく議論を提起し、一般人を含む参加者からの発言をもとめた。 こうした経緯をふまえ、篠は、現象学的-哲学的人間学的立場から、「死すべき人間」をめぐる「死の現象学」を構想するにいたった。これは、篠が前年度から研究しはじめている、より包括的な構想、「自然の現象学」において重要な一部となるはずである。死すべき存在であるとともに、死すべき存在であることを自覚する存在でもある人間は、まさにそのことによって自然のうちに位置づけられるとともに、自然そのものからみずからを区別するからである。清水は、長年にわたる医療現場へのコミットメントを背景に、終末期医療の実状に目を配りながら、「尊厳死」や「安楽死」をめぐる諸問題に関して考察をふかめ、また、清水のもう一方の関心分野である中世哲学、キリスト教思想をめぐる研究との再接合をも試みはじめた。とくに、いわゆる悪の起源をめぐる中世哲学の議論のうちに、積極的行為と消極的行為の区別にかかわる、今日でもなお参照にあたいする論理の原型を発見するにいたった。熊野は、本科研費による研究期間中、一貫して携わってきたレヴィナス研究に、一応の決着をつけ、今年度はとくにレヴィナスの後期思想をめぐって、長編論文を『思想』誌上に3回にわたって連載したほか、あらためてレヴィナス思想の全体像を再考しはじめた。後者については、その成果の一部が、まずは『レヴィナス入門』という一般書のかたちで本年5月に刊行が予定されている。
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