本年度は、初年度の計画、すなわち、ある限定された倫理学基礎語彙について 近代以前の意味用法、(2)翻訳語としての定着過程および意義・用法を、(1)日本倫理 の知見、(2)明治大正期の倫理学研究の中での意味概念、(3)個別の語彙のついての の一覧の作成、という手法による資料集を構築し、それをもとにそれらの公共的方法のミニマムな規定および、その解釈上、使用上のヴァリエーションを考察するという方法による研究を引き続き継続した。 研究に先立って選んだ語彙は、道徳・倫理・義務・責任・良心・家族・人格・社会・愛・自由・正義・寛容・公平・徳など主として、対他的な関係を含意するものであった。 初年度は、そのうち家族などにつき、得られた知見を論文の形で公刊したが、今年度はとくに、それら語彙が現代的な場面でいかに把握され、どのような倫理的曲面で用いられるかの理解に重点をおき、その実践的場面へ、西洋倫理学の知見、東洋・日本倫理思想史の知見を参照し、位置づけるという試みを進めた。それはとくに責任という語彙についての考察などに結実した。 また、伝統から近代の日本の倫理学への連続的理解という点から得られ知見を、無常、諦観の分析の中に盛り込み、方法的に進化させることができたのは、本研究の派生的なせいかであった。
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