(1)デカルト神話という概念における「神話」の意味の確定。 多義的な神話概念を検討し、とくにロラン・バルトの神話概念を参考に、本研究における神話概念を検討した。 (2)オランダにおけるデカルト神話の生成に関わる状況の精査。 1641年の『省察』出版以降、オランダにおけるデカルトの名声とそれに比例して生じた批判が、どのようにデカルト神話と関連するのかを、伝記的事実とそれに関連する「神話」的表現との比較検討を行なった。 (3)これまでの研究の補正。 同一主題の研究は出現していないが、デカルト研究、十八世紀フランス思想研究文献のうちで、この主題に関係するものを検討し、批判的に摂取することに努めた。 (4)十九世紀前半のフランスにおけるデカルト像の検討。 ヴィクトール・ク-ザンを中心とするデカルト主義研究のうちにみられる新しいデカルト理解の検討を行なうと同時に、こうした新解釈を可能にした思想史的状況の検討を行なった。しかしこの課題はすでに、十八世紀におけるデカルト像という問題を超え、次の新しい課題(十九世紀フランスにおける哲学と思想の制度的研究)の設定を促した。 以上のような成果を総合して、できるだけ早い機会にこれまでの研究をまとめ、出版する計画である。
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