本年度も昨年度に引き続き合計3回にわたって近世日本の対外観に関わる文献や史料の収集に努めた。殊に対馬歴史民俗資料館では対馬藩宗家文書の閲覧、複写、写真撮影等の史料調査を実施し、研究の著しい進展を見ることができた。これらの史料については合計6回の華夷思想研究会(研究代表者の主催する研究会)において分析を深め成果を交換することができた。また1997年8月には私費にて渡韓し、第5回日韓宗教研究者交流シンポジウムに参加し、韓国側研究者との情報・意見交換を行った。これらの研究活動を通じて『徳川時代の華夷思想』(仮題・1999年刊行予定)出版に向けた準備は着実に進行し、その中間成果を「雨森芳洲再考」(『立命館文学』551号)として発表した。国民国家形成に先立つ時代における対外観、「自-他」認識の特質、及びその変遷過程の見通しを示しえたと考えている。
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