西洋美術において「顔」の表象は、もっとも重要なテーマのひとつであった。キリスト教のイコン、ルネサンス以降の肖像画や自画像、近世における人相学や性格描写への関心等が思い浮かぶであろう。 これら個々のジャンルについては、個別的な研究は数多くあるが、「顔の表象」という包括的な問題として捉え直されたことは稀であった。それゆえ本研究は、この問題を歴史的かつ理論的に解明することを目的として進められている。 とりわけ本年度は、イコン、肖像画、自画像、人相学、解剖学等に関する原典、研究書、画集の収集と読みという作業が進められている。 さらに、16世紀のイタリアで著された女性論、美人論の解読と、女性肖像画等の分析を通じて、「美しい女性」のイメージが、西洋においていかに形成されていくかが研究された。その成果は、ルネサンスの「美人」論として1冊の本にまとめられ、近く出版される予定である。
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