まずイタリアのルネサンスからマニエリスムの時代にイタリア語で著された女性論において、女性の顔や身体を表象するコードがいかにして練り上げられていくかを追跡した。具体的にはアーニョロ・フィレンツオーラの『女性の美しさについての対話』(1548年)とフェデリコ・ルイジーニの『美しき女性の書』(1554年)である。また、そこにいかなるジェンダーの力学が作用しているかを分析するとともに、当時の女性肖像画や神話画との関連を問うた。 次にルネサンス以降数多く描かれるようになった画家たちの自画像をとりあげた。鏡を見ながら自分の顔を表象するという行為がはらんでいた種々な問題点を、精神分析の考え方をも参考にしながら、具体的な作品を分析することによって浮かびあがらせようと試みた。
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